5 やってはいけない勉強法②
<前回のあらすじ>
自分の才能に酔いしれる橋本君。勉強中にも、こちらへ上から目線でアドバイスしてくれるほどのレベルになったらしい・・・(同期なのに。)そんな橋本君へ熱心に技能の練習を勧める俺。それにはちゃんとした理由があったのだが・・・
俺が橋本君に何度も注意したのには、きちんとした理由があった。
(俺は俺なりに橋本君にも合格してほしかった。絶対に3人で合格したかった。)
会社には繁忙期と閑散期がある。
実はこの勉強時間は閑散期に与えられていた。
筆記試験や実技試験の頃は繁忙期(5~7月)に入る為、おそらく勉強時間は与えてくれないだろう。 とすると、今のうち(1~4月)に実技までやっておかなければならない。 時間のかかる電気の計算や配電理論は捨てて、少しでも実技をすべきなのだ。
筆記は50問中30問で合格。
これは過去10年分を2~3回繰り返していれば、ほぼ合格するだろう。
(なんてったって、この試験は"現場の職人"用の試験だ。難しいはずがない。)
問題は実技なのだ。
この事を"経験的"に知っていた俺は、橋本君に何度もこう言った。
「この試験はな。電気工事の現場で働く人向けの試験やで。
なんで電気の計算やら配電理論が必要やねん?考えてみ?
筆記はそこそこで受かるから、実技をやらんかい!」
(ほんま、何回もいわせるなよ~)
橋本君「過去問題は後でやりますよ~、実技は筆記が受かってからですよね~」
俺「それじゃあ時間が足らんねんって!橋本君!今のうちに公表問題を全部やっとかんと時間がないで! 筆記なんか過去問やっとったら合格できるわ!」
何度言っても聞かない橋本君。俺は再度ゴールドエクスペリエンスで攻撃してみるが、まったく効かない(聞かない。)過去問には目も触れず、ひたすらに教科書を見て教科書を作る作業をしていた。

(昔からこういう勉強法をする人って、テストの成績は良くないよなあ。 繰り返し問題を解く方式の方が人間の脳には向いているのに。)
過去問題を繰り返す俺と山田君に対し、橋本君はひたすらノートを教科書に作り替える作業に時間を使っていたのだ。
相変わらずの ”ホース・イヤー・インギャラクシー”(宇宙一の馬の耳) である。
だめだ、こりゃ・・。(長さん2回目)
勉強は教科書を復習するより問題を解くほうが効果的だ──。
そんな論文が『サイエンス』誌の2008年2月15日号で報告された。 米パデュー大学のカーピック博士の研究だ。より専門的に説明すれば「入力を繰り返すよりも、出力を繰り返すほうが、脳回路への情報の定着がよい」ということになる。カーピック博士はよく練られた実験デザインを活用して、この面白い事実を発見した。
~途中略~
つまり、私たちの脳は、情報を何度も入れ込む(学習する)よりも、その情報を何度も使ってみる(想起する)ことで、長期間安定して情報を保存することができるのだ。
言うなればこれは、参考書を繰り返し丁寧に読むより、問題集を繰り返しやるほうが、効果的な学習が期待できるというわけだ。
営業職のビジネスパーソンなら、自社製品の技術資料を繰り返し読むより、顧客先で何回もプレゼンテーションをこなす方が、製品の情報がよく頭に入るということだろうか。 入力よりも出力を重視
── 脳はそうデザインされているらしい。池谷 裕二(いけがや・ゆうじ)
<このページのまとめ>
資格取得の為の勉強法は色々ありますが、この試験は過去問題の繰り返しが最高のやり方です。橋本君の勉強法が悪いとは言いませんが時間の割に効果が薄いのですね。対費用効果が悪い勉強法です。50問中の30問が正解ならば合格という試験で、しかも現場職人の為の試験。
で、あれば、当然ややこしい電気の計算だの配電理論だのは後回し。部材や工具の名前、工事の手順などを学習すべきです。
筆記試験は過去問を2、3周すれば、ほとんどの人が合格できるレベルです。
そしてですね、私も経験があるのですが勉強すると眠くなります。特に教科書を見て教科書を作るような勉強法って完全睡眠薬です。橋本君は・・・自習時間によく寝てました。(勤務時間だと言うのに!)
ところがですね、過去問題って眠たくならないのですよ。自習は眠たいものですが、過去問は不思議と起きてられました。